介護保険とは?その概要について紹介します。
- 老人ホーム入居・転居と選び方
- 2020/11/12
介護保険制度とは、介護が必要な方や高齢者に費用を給付してくれる保険であり、社会全体で支える仕組みです。介護サービスを自由に選ぶことができるようになり、在宅サービスの充実にも重点が置かれています。介護保険についての概要、受けられるサービスなども紹介します。
介護保険とは?
介護が必要な高齢者が費用給付を受けられる保険!
介護保険は、介護が必要な方に費用が給付される制度です。制度の運営主体(保険者)は全国の市区町村になり、その地域に住んでいる40歳以上の方(被保険者)の保険料と税金で運営されています。給付を受けるには、どの程度介護が必要か判定をするために申請が必要になります。また、加入条件もあり保険者の審査があります。
費用についても審査結果により変わり、負担割合も原則1割の自己負担から、2割、3割と自己負担率が前年度の所得に応じて変わります。
40歳以上の方は、介護保険の加入が義務付け!
介護保険制度は、介護が必要になった方や高齢者とその家族を社会全体で支えていく仕組みです。介護保険の加入は40歳になると義務付けられ、保険料を支払うことになります。
制度を運営している市区町村を「保険者」といい、現在の制度では、40歳以上の全員が介護保険料を支払い「被保険者」といいます。
介護保険制度の特徴!
介護保険制度は、みんなで支える制度で3つの主な特徴があります。
①介護保険利用者の自立支援を目指すこと
②利用者本位のサービス利用(選択してサービスを受ける)
③社会保険方式で給付と負担が明確である
尚、介護サービスを提供する人を「サービス提供者」といいます。
介護保険料率や収め方について
被保険者は年齢や収入によって介護保険料率や収め方が変わってきます。
40歳から64歳までの被保険者は、健康保険と一緒に徴収され、健康保険組合によって、介護保険料率は変わります。また、被扶養配偶者は収める必要がありません。国民健康保険の加入者は、自治体の財政により、所得割と均等割、平等割、資産割の4つを独自に組み合わせて計算されますので、介護保険料率も変わってきます。
65歳以上の被保険者は、年金からの天引きが原則となり市区町村へ収めます。自治体ごとに違いますし、国の調整交付金などで低所得者の保険料軽減も行われています。
介護保険制度の財源は、保険料50%、税金50%(国25%、県12.5%、市区町村12.5%)が内訳となります。介護サービス利用時には、7~9割がこの財源で残りの1~3割が自己負担分でまかなわれます。
介護保険で受けられるサービスには種類があるの?
自宅や介護施設など大きく3つに分けられる!
次に介護サービスは介護保険法のもと、大きく3つに①居宅サービス、②施設サービス、③地域密着型サービスに分かれます。
居宅サービス
居宅サービスは、さまざまな種類のサービスがありますが、主に「通所サービス」「訪問サービス」「短期入所サービス」などで、自宅に住みながら利用できるサービスです。
主な居宅サービス
・「通所サービス」には、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)
・「訪問サービス」には、訪問介護(ホームヘルプサービス)、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導
・「短期入所サービス」には、ショートスティで短期入所生活介護、短気入所療養介護
施設サービス
施設サービスは、介護保険施設になり入所することです。
該当施設例:
・特別養護老人ホーム、介護保健老人施設、介護療養型医療施設、介護医療院など
地域密着型サービス
地域密着型サービスは、地域密着型通所介護など介護が必要になった状態でもできる限り住み慣れた地域で生活を続けていけるように支援するサービスです。原則、住んでいる市区町村のサービスしか受けることができません。
介護保険サービスについては『介護保険サービスとは』も参考にしてみてください。
介護サービスを受けるには
介護認定を受けていることが前提!
介護保険が適用される条件として、「第1号被保険者」と「第2号被保険者」に分かれます。
①第1号被保険者とは年齢65歳以上で、要介護、要支援状態であることがサービス利用条件
②第2号被保険者とは年齢40~64歳で、16の特定疾病(末期がんや筋委縮性側索硬化症、初老期における認知症、脊柱管狭窄症、脳血管疾患、関節リウマチなど)と診断されており要介護、要支援状態であることがサービス利用条件
介護認定の区分について
介護サービスを受けるには要介護認定があり、必要な介護の量を判定する仕組みとして7つのランクに分けて判断します。生活機能が低下し、その改善の可能性が高いと見込まれる状態を、要支援1~2、現在、介護サービスが必要な状態を、要介護1~5と数字で表し、大きくなるほど、介護サービスがより必要という判定になります。
要支援は「要支援1」「要支援2」、要介護は、「要介護1」「要介護2」「要介護3」「要介護4」「要介護5」となります。
介護保険の申請は本人でもできますが、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが申請の代行を行うこともできます。
要介護(要支援)認定を受けるには申請が必要!
介護の相談や介護保険の申請にあたり受付窓口は、住まいのある市区町村の「福祉課」、「地域包括支援センター」になります。「地域包括支援センター」とは、自治体から委託された社会福祉法人や医療法人などによって運営されています。社会福祉士や介護支援専門員(ケアマネジャー)、保健師が配置されています。
介護保険の申請は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)などの職員が、申請の代行をすることも可能です。申請後に、市区町村は利用者の心身の状況を調査して、かかりつけ医による意見書(主治医意見書)や介護認定審査会などを経て、「要介護(要支援)認定」を行います。
※申請にあたり、自治体から65歳以上の人に郵送されている「介護保険被保険者証」が必要となります。 ※申請から認定結果がでるまでに、約1ヶ月程度を要します。その間に、認定調査員と言われる役所から任命された調査員が自宅(または病院)に訪問し、利用者、家族に日常生活状況を伺い、身体機能のチェックを行います。
認定結果が、要支援であれば地域包括支援センター職員、要介護であれば居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当者としてつき、介護サービスを利用するための手続きや計画書の作成、各介護サービス事業所の紹介を行ってくれます。
【手順について】
1.地域包括支援センターあるいは役所の介護保険窓口へ相談・申請。
2.訪問調査を受ける。
3.認定結果の通知、新しい保険証が届く。
4.介護保険のサービスを受けるために、ケアマネジャーを決める。
介護保険についてよくある質問を紹介!
介護保険被保険者証はどこでもらえるの?
介護保険被保険者証(以下、「介護保険証」という。)は、以下の方法で受け取ることができます。
①65歳以上の第1号被保険者全員にお住いの各市区町村から交付されます。
※医療機関で提示する健康保険証とは別のもの。
②65歳未満(40~64歳)の第2号被保険者は、特定16疾病により要支援・要介護認定を受けた場合は介護保険証が交付されます。
※介護サービスは交付されただけでは利用することはできず、必ず要支援・要介護認定を受ける必要があります。
介護保険証を紛失した場合は、市区町村の介護保険担当窓口で再交付の手続きが必要です。住所が変更になる場合にも、介護保険担当窓口で住所変更手続きが必要です。
自己負担の割合は?
介護保険の自己負担は、所得により1割から最大3割と決まっています。全国的に1割負担の方が多いですが、現役並みに所得のある高齢者は、介護保険利用時の自己負担割合は3割になります。
※単身者で年金収入などが340万円以上(年金収入のみの単身者344万円)の人も3割負担になります。現在の介護サービスにおいては、保険外サービスといわれる全額自費サービスもありますので、利用前には負担割合を確認することをおすすめします。
利用可能な上限金額がある?
介護保険には、介護度に応じて支給限度額が設定されており、基本的にはこの範囲内でケアマネジャーはケアプランを作成しています。介護度が重いほど限度額が大きくなりますが、限度額以上にサービスを受けたい場合には、全額自己負担となります。
※介護保険は、点数制で計算をしております。1点10円が基本換算ですが、1点の単価は10~11.40円で地域とサービスにより変わってきます。
給付限度額の例:
例えば、要介護1の方は、給付限度額が167,650円となり、1割負担額では16,765円となります。要介護5の方は、給付限度額が362,170円となり、1割負担額では36,217円となります。一見、要介護5は介護サービスを多く受けることができるように見えますが、その分自己負担額も大きく増えることになります。
介護保険制度は改正されるの?
2000年4月からスタートした介護保険制度は「介護保険法」という法律に基づいた制度であり、現在3年ごとに見直し・改正が行われております。介護保険は「走りながら考える」という方針でスタートした制度であり、運用しながら、必要に応じて制度を変更していくとされています。この20年の間で、様々な制度改正が行われています。
2005年度改正:
・要支援1・要支援2の新予防給付
・地域包括支援センターが設置
・地域密着型サービスの創設
2011年度改正
・介護職員処遇改善加算の創設
・定期巡回、随時対応型訪問介護看護の創設
・喀痰吸引を介護福祉士が実施可能
2014年度改正
・地域包括ケアシステムの構築を協力に推進
・一定水準以上の第1号被保険者の自己負担を2割に引き上げ
・特別養護老人ホーム入所受け入れは原則として要介護3以上に
・介護予防訪問介護と介護予防通所介護の総合事業へ移行開始
2017年度改正
・共生型サービスの創設
・一定水準以上の第1号被保険者の自己負担を3割に引き上げ
当コラム記事の内容について
当記事の内容は、介護現場、ならびに医療法人などでも活躍された経験者監修のもと、ご紹介します。
インタビュアー プロフィール
藤井 寿和氏
合同会社福祉クリエーションジャパン 代表
陸上自衛官を経験後、介護の仕事に転身。医療法人の事業部統括マネージャーに就任した後、独立。
● 介護施設 現場支援コンサルタント
● レクリエーション介護士1級・2級 公認講師
● 介護情報誌「介護Times Tokyo」および「TOWN介護Tokyo」編集長
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