認知症とは?その種類や予防策についても紹介します。
- 介護に関するお役立ち情報
- 2022/04/01
高齢化が進んでいくにつれて、認知症患者は増加する傾向にあります。また、現在は若年性認知症など65歳未満で発症するケースもあります。しかし、早期発見により治療開始することで、その進行をゆるやかにできる可能性があります。また、それぞれの認知症の方に合った適切なケアがあります。ここでは、認知症の種類や症状、予防法などについて紹介します。
当コラム内容について
認知症について、インタビュアーに専門家の1見解をもとにまとめました。
以下でご紹介する内容で異なる場合もあるかもしれませんが、ご理解の程よろしくお願い致します。
認知症とは?
脳の神経細胞破壊・減少で、正常な日常生活が送れない状態!
認知症とは、脳の神経細胞の破壊・減少により記憶力や判断力、注意力、計画力、実行能力、会話能力などの知的機能に障害が起こり、正常な日常生活あるいは社会生活が送れない状態のことです。認知症にはさまざまな種類があり、アルツハイマー病もその一つです。
尚、物忘れなどの認知力が同年齢のレベルよりも低下はしているが、日常生活に支障をきたしていない状態を軽度認知症障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)といいます。認知症と生理的老化現象との中間で、認知症予備軍とよばれているものです。
『物忘れ』が『認知症』ではない!
もの忘れには「加齢」によるものと「認知症」が原因となるものがあります。前者は、脳の生理的な老化が原因で起こります。その程度は一部のもの忘れであり、ヒントがあれば思い出すことができます。本人に自覚はありますが、進行性はなく日常生活に支障をきたしません。
一方で後者は、脳の神経細胞の急激な破壊により起こります。もの忘れは物事全体がすっぽりと抜け落ち、ヒントを与えても思い出すことができません。本人に自覚はありませんが、進行性であり日常生活に支障をきたします。
代表的な認知症の種類を紹介!
アルツハイマー型認知症
原因について
現在の日本では、アルツハイマー型認知症が最も多いとされています。まれに若年で発症するケースもありますが、アルツハイマー型認知症の原因となるアルツハイマー病は年齢を重ねるほどに発症しやすくなります。社会が高齢化しているために、アルツハイマー病が増えているともいわれています。
アルツハイマー型認知症の原因全てがはっきりと分かってはいません。しかし、現時点でアルツハイマー病を発症している脳では、アミロイドβというたんぱく質の蓄積、神経細胞内で栄養や情報を送る働きをする神経原繊維(しんけいげんせんい)の変化が見られることが分かっています。
これらのことから、神経細胞が死滅して神経細胞同士のつなぎ目であるシナプスの減少、神経伝達物質であるアセチルコリンの濃度の低下が起こり、認知症の症状があらわれるとされています。
症状について
アルツハイマー型認知症の症状の表れ方には個人差があります。発症してからわずかな期間で話が出来なくなったり、寝たきりになったりすることもあります。一方で、物忘れなどの症状がありつつも1人暮らしを継続している人もいます。
個人差がありますが、アルツハイマー型認知症では初期、中期、後期と症状が進んでいきます。
●初期症状
物忘れが目立ち、老化現象と捉えられることも珍しくありません。
●中期症状
今その瞬間のことしか分からなくなったり、季節が分からず気候にあった服を選べなくなったりします。
●後期症状
脳のダメージが広がってくると、知的機能だけでなく身体機能もコントロールできなくなってきます。会話が通じない、寝たきりになる、水や食べ物を飲み込むことも難しくなってきます。
対応時の注意点など
現在、アルツハイマー型認知症の進行を遅らせる薬はあるものの、根本的な治療は難しいとされています。しかし、認知症の症状とともに過ごしていくためのケアやコミュニケーション方法が提唱されています。認知症の正しい知識と適切なケアやコミュニケーションを学ぶことで、本人もケアをする家族や介護者もより過ごしやすくなるとされています。
アルツハイマー病について
アルツハイマー病についての詳細は、別ページでも紹介しています。併せてご参照ください。
アルツハイマー病とは?その原因やアルツハイマー病患者への接し方なども紹介!
脳血管型認知症
原因について
脳の血管障害が原因で起こる認知症の総称を言います。例えば、脳の血管障害には脳の血管が詰まる「脳梗塞」や脳の血管が破れる「脳出血」があり、脳血管性認知症の多くは「脳梗塞」が原因となります。近年は脳血管障害に対する治療法が進み、脳血管性認知症は減少傾向にあります。しかし、アルツハイマー型認知症に次いで2番目に多いのが現状です。
症状について
脳血管性の認知症は「まだら認知症」とも呼ばれています。認知機能が全般的に低下するアルツハイマー型認知症に比べて、脳血管性では脳の全てが障害されずに健常な部分が残ることも特徴とされています。できることとできないことの差があり、認知機能がまだら状に保存されています。また、1日~数日の周期で意識がはっきりとして活動的な時、そうでない時があります。
対応時の注意点など
脳血管性認知症では元々の人格が比較的保たれていて、初期の段階では自分ができないことや分からないことに対して自覚しているケースがあるのも特徴です。そのため、本人も歯がゆい気持ちを抱えていて辛い気持ちを受け止める言動を心がける必要があります。感情を抑えられずに泣いたり、怒ったりすることもあります。日常生活のなかで感情の変化のきっかけを知り、声掛けや介護につなげるとよいでしょう。
自発性や意欲の低下もみられる時には、これまでの生活習慣を考慮して少しでも興味のあることを勧めるなどをしてみましょう。また、脳出血や脳梗塞の原因となる高血圧、糖尿病、脂質異常症や心臓の病気などをそのままにせず改善できるようにすることも大切です。
レビー小体型認知症
原因について
レビー小体型認知症は、レビー小体という異常なたんぱく質が脳幹部や大脳皮質に溜まることにより発症します。主に65歳以上の男性に多い傾向があります。
症状について
レビー小体認知症では、以下のような症状があります。
●幻視
実際には存在しないものや人、虫などがみえる幻視が特徴です。その内容が具体的で混乱しやすく、精神状態にも影響を与えます。また、誰かがいる気配を感じたり、妄想が出ることもあります。
●パーキンソン症状
手足が震える、筋肉がこわばる、体の動きがスムーズにいかなくなる、姿勢が前かがみになる、突進して止まれなくなるなどの症状があります。
●症状の変動
1日のうちでも認知機能に障害が無い時間帯、混乱する時間帯があるなど変動することがあります。
●レム睡眠行動異常
睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。浅い眠りであるレム睡眠の時に、怖い夢を見て大声で叫んだり怒ったりすることがあります。
対応時の注意点など
初期のレビー小体型認知症は他の認知症と違い、幻視や妄想などの精神症状やパーキンソン症状などが中心の為、他の病気と診断されるケースもあります。早期に正しい診断ができれば適切な治療につながるため、本人の言動に異常を感じたらできるだけ早く専門医に相談・診察できると良いとされています。
前頭側頭型認知症
原因について
前頭側頭型認知症は、大脳の前頭葉と側頭葉の委縮によって起こる認知症です。代表的な原因となる病気に「ピック病」というものがあります。ピック球という異常な構造物が神経細胞に溜まることで起こるとされています。
症状について
前頭側頭型認知症では、元々の性格が変わってしまったような症状がみられます。お腹が空いたために、お店の商品を勝手にとっていってしまうなど万引きのような行動をとってしまうこともあります。記憶力は保たれているものの社会的な行動がとれなくなり、怒りっぽくなったりします。
このような症状が起こるのは、前頭葉が障害されるためです。前頭葉は、喜怒哀楽や規則を守るなど人間らしい行動を司る部分です。その前頭葉の障害により、これまでと人格や性格の変化が表れます。
対応時の注意点など
初期の段階から、予定が変わると興奮したり混乱したりする「常同行動」があるとされています。毎日決まった時間にデイケアに参加するなど、本人が落ち着ける生活のリズムを整えていくことが必要となります。同じことを繰り返したり、抑制がきかなくなることで周囲の人の負担も大きくなる認知症の一つです。難しいこともありますが、本人の性格ととらえずに病気の症状によるものと捉えて、生活をよく観察しパターンを知ることが大切です。
若年性認知症
原因について
65歳未満で発症する認知症の総称を若年性認知症といいます。原因となる病気で最も多いのが「脳血管性認知症」で、次に「アルツハイマー型認知症」となっています。高齢者の認知症と比較し、若年性認知症の原因は様々です。
症状について
若年性認知症は発症しても発見が遅れがちで、うつ病など他の病気と間違われることもあります。
【家族がはじめに気が付いた症状として多いこと】
・物忘れ
・行動の変化
・性格の変化
・言語障害など
対応時の注意点など
働き盛りであるため、家族への負担も大きくなるとされています。介護保険で公的なサービスを利用したり、ソーシャルワーカーに相談して必要な福祉サービスを受ける必要があるでしょう。
中核症状と周辺症状について
中核症状とは
認知症の症状は「中核症状」と「行動・心理症状」に分けられます。中核症状は、脳の神経細胞に障害を受けることで起こる症状です。
以下のような症状がありますが、認知症の型によりそれぞれあらわれる症状が変わります。
●記憶障害
物事を記憶することができなくなる。
●実行機能障害
計画を立てたり、手順を考えられなくなる。
●失語、失認、失行
失語:言葉を上手く使えなくなる。
失認:視覚や聴覚に異常がなくても見たり聞いたりしたことを正しく把握できなくなる。
失行:運動機能に異常がないにも関わらず、シャツを通すなどの日常動作ができなくなる。
●判断力の低下
筋道を立てて物事を考えられなくなる。物事の判断がつかなくなる。
●見当識の障害
月日や時間、場所、人物などがわからなくなる。
行動・心理症状
中核症状とは違い、中核症状が起こるストレスから生じていることが多く、症状のあらわれ方には個人差があります。徘徊や妄想、暴言や暴力、ケアへの抵抗などがみられます。中核症状の根本的な可能性は難しいのですが、行動・心理症状は不安などの心理的な要因や環境的な要因によって生じるため適切なケアや環境を整えることによって改善が期待できます。
認知症はどのように発症していくの?
軽度認知症障害を経て発症!
認知症は、前段階でもある『軽度認知障害』を経て発症していくことが分かっています。軽度認知障害は、まだ認知症ともいえない状態です。軽度認知障害から回復に向かうこともありますが、進行して認知症になることもあります。
また、認知症でも『前期・中期・後期』の段階が分かれていて、後期(衰弱期)になると身体機能の低下、食事量や言葉の数が減少、失禁や転倒・骨折、誤嚥性肺炎や尿路感染症なども増えていき、床に就く状態になるケースもあります。
個人差はありますが、軽度認知障害の段階で、積極的に予防に取り組むことで進行を緩やかにできる可能性もあります。
認知症の予防策は?
『日頃から脳の健康状態を良い状態に保つ』ことが大切!
認知症を予防するには、日頃から脳の健康状態を良い状態に保つことが大切です。そのためには、認知症によって低下しやすい機能をトレーニングしておくことが重要とされています。自宅でも認知症予防を行うことはできます。
【認知症予防対策例】
・適度な運動をしながら他のことを考える。
散歩をしながら過去の日常を振り返る、体操しながら暗算をする など
・十分な食事と睡眠を取る。
・知的活動を行う。
趣味(読書や手工芸など)、家事、住民会への参加、パソコンを使った作業、ゲームなど
・生活習慣を見直し、糖尿病や高血圧などのリスクを減らす。
最近では地域で認知症予防のプログラムも実施しているところもあるので、参加してみてもよいでしょう。
おかしい、と感じたら早めに医師に相談!
なかなか難しいこともありますが、本人の言動に「おかしいな」と感じたら早めに医師に相談することをおすすめします。まずはかかりつけの医師に相談でもよいでしょう。そこから認知症の専門医を紹介してもらうのもひとつです。「物忘れ外来」を設置している病院もあります。
早めに相談することで、認知症の症状によるものか、他に病気が隠れているのか気づける可能性があります。
また、認知症とわからないままに家族が接することでお互い混乱し疲弊してしまうことも。適切なアドバイスを受けることで、認知症を受け入れ、介護にも良い影響が生まれます。 現在、認知症を根治する薬は認められていませんが、治療も早いほど進行を遅らせるとされています。必要に応じて福祉サービスの利用も受けられる可能性があります。
認知症による介護でお困りの方へ
『MY介護の広場』相談窓口まで
認知症による介護により施設探しのご相談方など、お困りの際はお気軽に『MY介護の広場 入居相談窓口』までご連絡ください。
認知症の方でも入居可能な老人ホームについて、主要エリア別でご紹介させて致します。こちらもご参考頂ければと思います。
関東エリア
主な都道府県 | |||
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東京都 | 神奈川 | 千葉 | 埼玉 |
※その他、介護付有料老人ホームをお探しの方は『こちら』もご参考ください。
近畿・中国エリア
主な都道府県 | |||
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大阪 | 兵庫 | 京都 | 広島 |
※その他、介護付有料老人ホームをお探しの方は『こちら』もご参考ください。
九州エリア
主な都道府県 | |||
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福岡 |
※その他、介護付有料老人ホームをお探しの方は『こちら』もご参考ください。
ライター プロフィール
<塩野 涼子氏>
栃木県宇都宮市生まれ。東京都内在住。
看護師として循環器やHCU、精神科病棟、介護施設で勤務経験あり。現在双子を育てながらライター活動をメインに、時折クリニックでも勤務中。産前、産後に悪戦苦闘したことから母子保健に興味を持ち、主に医師監修のもと妊娠や出産について、記事を作成。根拠に基づいた情報の発信を心がけている。
監修者
<藤井 寿和氏>
合同会社福祉クリエーションジャパン 代表
陸上自衛官を経験後、介護の仕事に転身。医療法人の事業部統括マネージャーに就任した後、独立。
● 介護施設 現場支援コンサルタント
● レクリエーション介護士1級・2級 公認講師
● 介護情報誌「介護Times Tokyo」および「TOWN介護Tokyo」編集長
認知症関連の記事を紹介!
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