透析とは?透析の種類や日常生活への影響なども解説します。

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透析とは、何らかの原因で腎臓の機能が低下した時に、腎臓の働きの一部を補う治療法です。日本での透析患者は30万人以上と言われており、多くの方が透析を受けています。透析には、血液透析と腹膜透析の2種類の方法があります。この記事では、それぞれの透析の特徴や日常生活への影響、合併症などをご紹介します。

透析とは?

「老廃物・余分な水分の排泄など」人工的に血液浄化を行う治療法!

透析とは、腎臓の代わりに血液中の老廃物や余分な水分を取り除く治療法です。本来なら老廃物や余分な水分は、腎臓によって体の外に排泄されます。なんらかの理由で腎臓の機能が低下すると、老廃物や水分が体にたまってしまいます。人工的に血液を浄化し、老廃物や水分の排泄を行うのが「透析」という治療です。

「透析」には2種類の方法がある!

血液透析

血液透析は、透析装置によって血液浄化を行う治療法です。
まず血管から取り出した血液を、ダイアライザーと呼ばれる筒状の透析器に流します。ダイアライザーの中には、1万本前後の細いストロー状の糸が通っています。その糸の中を血液が通る時に、老廃物や余分な水分が除去されます。浄化された血液は、血管の中から再び体内に戻ります。

このような方法で行われる透析には大きな装置が必要なため、基本的には設備が整った病院やクリニックなどで行います。

腹膜(ふくまく)透析

腹膜透析は、腹膜を使って老廃物や余分な水分を除去する治療法です。腹膜は、お腹の中にある内臓の表面を覆う膜のことです。
腹膜透析では、腹腔(ふっくう)と呼ばれる腹水がたまるスペースに専用の透析液を注入して行います。透析液はブドウ糖が主な成分で、体内の水分より濃度が高くつくられています。透析液を腹腔に数時間ためておくと、濃度の違いで起こる浸透圧によって腹膜を通して血管内の老廃物や水分が腹腔の中に移動してきます。これらの老廃物や水分が十分移動したら、透析液ごと体の外に取り出します。これを繰り返すことで、血液を浄化していきます。

腹膜透析では患者さん自身が行う治療なので、病院に通院する回数が少なく、自分らしい生活が維持できるとされています。

透析が必要になるのはどんな時?

末期腎不全になった時

腎臓の機能は大きく3つあり、老廃物の除去、体液の調節、ホルモンの分泌を行います。腎臓の機能が低下すると、本来の機能を果たせなくなり、老廃物や水分が体にたまりやすくなったり、ホルモンの異常によって貧血や高血圧を起こしたりします。さらに進行し末期腎不全と呼ばれる状態になると、体内に不要な老廃物や水分がたまって尿毒症という状態になります。
尿毒症になると全身のむくみや呼吸困難などの症状があらわれ、重症になると心不全やけいれんなどを引き起こします。そのままにしておくと命に関わるため、腎臓の働きを補う腎代替療法という治療が必要になります。

腎代替療法は大きく「透析療法」と「腎移植」に分類されます。腎移植では腎臓の提供が必要になるため、多くの場合「透析療法」が行われます。

透析開始の時期について

透析を開始するのは、回復できない腎臓の機能低下が進み、生命の維持が難しくなった時です。具体的にどのような状態になったら透析を始めるのか、判断するための導入基準があります。その基準では、出現している症状、腎臓の機能、日常生活への支障などを点数化し、その点数によって透析の開始を検討します。

透析はどうやって始めるの?

血液透析の場合:大量の血液を取り出す経路をつくる!

血液透析では大量の血液を透析回路に循環させるため、その血液を取り出す経路が必要です。血液は血管から取り出しますが、細い静脈からでは透析に必要な血液量が確保できません。そのために血液量が多い動脈を静脈とつなぎ、流れの強い血管をつくります。これを内シャントといいます。内シャントに針を刺してカテーテルとつなぎ、大量の血液を透析の装置に循環させます。

内シャントは局所麻酔(体の一部だけに麻酔をかける)による手術が必要ですが、正しく管理することで長期間使用できます。内シャント以外にも、人工血管を使って血管同士をつなげたり、心臓の近くの太い血管にカテーテルを入れたり、血液を取り出す経路にはいくつか種類があります。

腹膜透析の場合:専用のカテーテルを入れる

腹膜透析を行うためには、透析液を出し入れするためのカテーテルを腹腔内に入れる手術が必要です。手術でカテーテルの先端を腹腔の中に留置し、カテーテルの反対側は体の外に出しておきます。外から見ると、お腹からカテーテルの一部が出ている状態です。
腹膜透析には、カテーテル留置後にすぐに腹膜透析を開始する方法以外に、手術後日数をあけてから段階的に導入する方法もあります。透析液の交換の時は、専用のバッグとカテーテルをつないで透析液を出し入れします。

透析はどれくらいのスケジュールで行うの?

血液透析のスケジュール

透析の装置がある病院やクリニックへ通院し、血液透析を行います。血液透析では、週3回、1回4~5時間の透析を行います。ただし通常のスケジュールでも症状が続く場合には、透析時間や回数を増やすこともあります。症状や病気の進行に応じて、透析時間や回数は変わります。

腹膜透析のスケジュール

患者さん自身で透析液の交換を行う腹膜透析には、病気の状態やライフスタイルに合わせたさまざまな方法があります。例えば、常に腹腔に透析液を貯めておく方法、昼間は何もせずに夜間だけ透析を行う方法などがあります。
透析液の交換頻度も治療スケジュールによって変わり、日中に自分で数回交換する方法や就寝中に機械で自動的に交換していく治療方法など、さまざまです。

透析による日常生活への影響・注意点は?

仕事との両立

透析をしながら仕事をするには、通院や治療の時間、合併症など、様々な課題があります。透析と仕事の両立には、家族や職場からの理解も重要です。透析には多くの方法があるため、主治医と相談しながら、自分に合った方法を選ぶことが大切です。

活動の制限

透析による治療を受ける場合、日常生活を送る上で活動の制限があります。血液透析の場合はシャントの腕に負担をかけない、腹膜透析の場合には腹圧(お腹に力を入れること)をかけないといった注意が必要です。スポーツや入浴などをする時にもそれぞれ気をつけるポイントがあり、自分のできること、できないことを把握しておくことが大切です。

食事管理

透析をしても、腎臓のすべての働きを代行することはできません。合併症の予防や栄養状態の維持・改善のためには、食事管理は欠かせません。具体的には、水分や塩分、カリウムの制限、エネルギーやタンパク質の適度な摂取などが必要です。
適切な食事管理は、健やかな生活を過ごすために必要です。ただし人によってどれくらいが適量なのかは違い、血液透析と腹膜透析でも食事制限の内容が変わります。好きな食べ物や生活状況などをふまえ、主治医や看護師、管理栄養士と相談しながら考えていくことが大切です。

体重管理

透析が必要な方にとって、体重管理はとても大切です。腎臓の働きが悪化していると、体に水がたまりやすく簡単に体重が増えてしまいます。水が体にたまると高血圧の原因になり、心臓や血管に負担がかかります。体の水分量を調節するためには、その人に合った体重を設定する必要があり、ドライウェイトという言葉を使います。
ドライウエイトとは、その人が目標とする理想的な体重のことをいい、複数の検査や症状などをもとに設定されます。ドライウェイトを保つためには、体の中の水分が増加しないよう水分や塩分の制限をしながら体重管理を行います。

シャント管理

シャントを長く使うためには、正しい管理が必要です。シャントの状態によっては、血液透析の効率が悪くなってしまうだけではなく、感染や閉塞といった合併症を起こす可能性があります。すべての合併症を予防できるわけではありませんが、できるだけ起こさないために日頃の観察やケアが必要です。
具体的な方法として、聴診器を使ってシャントの流れを聴く、負担をかけないようにシャントがある腕に重いものをかけない、感染予防のために石鹸でやさしく洗う、などがあります。

腹膜透析のカテーテル管理

腹膜透析のカテーテルは、先端が腹腔の中で反対は体の外に出ています。体内と外の交通路になっているため、そこから感染してしまう可能性があります。また、カテーテルのねじれやつまり、排液の色がおかしいなど、異常がある場合には早めの対応が必要です。カテーテルと皮膚の清潔を保つ、ねじれやつまりがないようにする、排液の色を観察するなど、患者さん自身の管理が大切です。

運動療法

透析が必要な方にとって、体の機能の維持はとても大切です。特に血液透析では、週3回4時間程度を安静に過ごす必要があります。さらに透析による合併症、病気による症状で活動量が低下しやすい状況にあります。活動量の低下は心肺機能や筋力などの衰えにつながり、ひどくなると一人で歩いたりお風呂に入ったりすることが難しくなります。日々の生活を健やかに過ごすためには、運動療法により体の機能を維持することも大切です。
どれくらいの運動が効果的かは人によって異なるため、医療施設で相談しながら行う必要があります。

透析によってどんな合併症が起こり得る?

「血液透析」で起こりうる合併症について

血圧低下

血液透析中に起こりやすい合併症の一つに、血圧低下があります。透析で体内の水分を取り除くと、血液の量が減って血圧低下を起こしやすくなります。特に心臓の機能の低下や糖尿病などがあると、血圧低下のリスクはさらに上がります。症状として、あくびや吐き気、息苦しさ、動悸、冷や汗などが現れます。

不整脈

透析によって体内の水分や電解質の量が急激に変化すると、不整脈が出現することがあります。透析を行う最中の特に後半以降に出現しやすく、血圧の低下や胸の痛み、動悸があります。

筋肉の痙攣(けいれん)

透析中に筋肉が痙攣(けいれん)することがあります。足のふくらはぎがつることが多く、強い痛みを感じます。透析によって水分を除去しすぎたり、除去する速度が速すぎたりすると、一部の筋肉の血流が低下し痙攣(けいれん)が起こります。他にも電解質の低下、足の冷えが原因になることがあります。

シャント障害

透析の度に針を刺すシャントは、長い間使っているうちにトラブルが起きることがあります。シャントが細くなったりつまったりすると、透析に必要な量の血液が取り出せなくなってしまいます。シャントの針を刺した部分からの感染も、重症化することがあり要注意です。シャントの血流が原因でコブができたり、手先の血のめぐりが悪くなったりします。

「腹膜透析」で起こりうる合併症について

腹膜炎

腹膜炎は、腹膜透析で起こりやすい合併症です。透析液を交換するときの不潔な操作やカテーテルの周囲からの感染により、腹膜に炎症が起こります。症状は腹痛、透析液がにごる、発熱などがあり、治療をしても改善しない場合は透析用のカテーテルを抜いてしまうこともあります。

被嚢性腹膜硬化症(ひのうせいふくまくこうかしょう)

腹膜が腸にくっついて圧迫して腸閉塞を引き起こす、腹膜透析に特有の合併症です。腸閉塞とは、何らかの原因で腸の流れが詰まってしまうことで、食欲低下や吐き気、腹痛、便秘などの症状が現れます。

注排液(ちゅうはいえき)不良

透析液を注入するのに時間がかかったり、透析液を体から十分な量を取り出せなくなったりすることを、注排液不良といいます。原因としては、カテーテルがつまっている、カテーテルの位置の異常、腸によってカテーテルが圧迫されている、などがあります。

「血液透析と腹膜透析」どちらでも起こり得る合併症について

心臓・血管系の合併症

透析が必要な方は水分が体にたまりやすく、それを循環させるために心臓に負担がかかっています。不整脈や動脈硬化の原因になり、心不全や心筋梗塞などの合併症を引き起こすことがあります。

貧血

貧血は透析を行う方の多くに見られ、息切れ、動悸、ふらつき、めまいなどの症状が現れます。腎臓のホルモン分泌不足、尿毒素の増加などにより起こります。透析を行っていても、腎臓の機能低下が進むにつれて、貧血の頻度は増えて症状が強くなっていきます。

骨・ミネラル代謝異常

腎臓の機能が低下すると、カルシウムやリン、ホルモンの代謝異常が起こります。この変化が長く続くことで、骨粗しょう症や血管石灰化という合併症を起こす可能性があります。

透析アミロイド症

透析期間が長くなると、アミロイドという物質が全身の骨や関節、内臓に付着してしまいます。これを透析アミロイド症といい、アミロイドが付着する場所により、様々な症状が現れます。アミロイドが神経を圧迫して手のしびれや痛みが出たり、関節に沈着して指の関節の曲げ伸ばしが困難になったりします。

感染症

腎不全では、抵抗力の低下により感染が起きやすい状況にあり、一度感染すると重症化する場合があります。透析では、シャントの針を刺す時や腹膜透析液の交換など、処置の際には常に感染のリスクにさらされています。

かゆみ

透析治療のための水分制限により、皮膚が乾燥しかゆみが出ることがあります。尿毒素がたまることも原因の一つと考えられています。完全に治すことは難しく、保湿やかゆみ止めによって症状を抑えるようにします。

悪性腫瘍

長期で透析を行う場合、悪性腫瘍の発生率が高くなると言われています。様々な原因が考えられていますが、悪性腫瘍は早期発見と早期治療が大切です。そのためには定期的にCTやエコー、内視鏡検査などを行うことが重要です。

まとめ

透析は、機能が低下した腎臓の代わりを果たす、生命を維持するための治療法です。安定した日常生活を送るために、主治医や看護師と一緒に治療を行っていきましょう。

ライター プロフィール

<野田 裕貴氏>
高校3年生の時の入院をきっかけに、看護師を目指す。看護学校を卒業後、地元の大学病院へ就職。緩和ケア、ICU、血液内科を経験し、幅広い看護を学ぶ。また、部署での看護ケアと平行し、看護研究や災害派遣、学生への講義、海外病院視察など、さまざま経験。
新卒から11年勤務した大学病院を、独立のために退職。これまでに身につけた知識やスキルを活かし、医療や働き方についての記事を執筆するライターとなる。

監修者

<藤井 寿和氏>
合同会社福祉クリエーションジャパン 代表
陸上自衛官を経験後、介護の仕事に転身。医療法人の事業部統括マネージャーに就任した後、独立。

● 介護施設 現場支援コンサルタント
● レクリエーション介護士1級・2級 公認講師
● 介護情報誌「介護Times Tokyo」および「TOWN介護Tokyo」編集長

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透析の受け入れ相談可能な施設まとめ

透析でも受け入れ可能な施設について、東京都内を例にまとめてみました。こちらも併せて参考にしてみてください。

東京都内

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練馬区 【東京都/練馬区】透析の受け入れ相談が可能な介護施設
足立区 【東京都/足立区】透析の受け入れ相談が可能な介護施設
江戸川区 【東京都/江戸川区】透析の受け入れ相談が可能な介護施設
大田区 【東京都/大田区】透析の受け入れ相談が可能な介護施設
杉並区 【東京都/杉並区】透析の受け入れが可能な介護施設
中野区 【東京都/中野区】透析の受け入れが可能な介護施設
板橋区 【東京都/板橋区】透析の受け入れが可能な介護施設
目黒区 【東京都/目黒区】透析の受け入れが可能な介護施設
八王子市 【東京都/八王子市】透析の受け入れ相談が可能な介護施設
町田市 【東京都/町田市】透析の受け入れ相談が可能な介護施設
調布市 【東京都/調布市】透析の受け入れ相談が可能な介護施設

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