老人ホームなどの高齢者施設にはさまざまな種類があり、入居を検討する人たちの事情もさまざま。入居条件や提供されるサービスも異なるので、適切なものを選びたいものです。施設選びの悩み・疑問に、老人ホーム選びのコンシェルジュが回答します。
※プライバシーに配慮し、実際の事例と変えている部分があります。
金額が高い=良い施設なのでしょうか?
質問:要支援の認定を受けた母のために老人ホームを探していますが、料金がピンキリで悩んでいます。これまでの生活水準を落とさず、できるだけ快適に過ごさせてあげたいとは思います。資産に余裕はありますが、金額が高いほど良い施設と考えていいのでしょうか。
回答:老人ホームの費用は、入居時にかかる初期費用と、毎月必要になる費用のふたつを考えておく必要があります。いずれも老人ホームのタイプによって異なりますが、高ければ高いほど、好立地で部屋は広く、設備、スタッフの手厚さ、食事のグレードなども充実すると考えて良いでしょう。ただし「料金=満足度」とは限りません。本人の要望にマッチしていないと金額に見合った心地良さを得られない場合もあります。
初期費用が0円と数千万円、この差は何?
入居一時金は、家賃(全額、または一部)の前払いに相当するもの。入居一時金から、一定期間の家賃や経費が充当されるイメージです。そのため、入居時の年齢が若いほど、入居一時金は高くなる傾向にあります。
何らかの理由で老人ホームを退去する場合には、残りの入居一時金は返金されますが、初期償却として「入居一時金の10~30%程度」が差し引かれる点は気をつけておきたいところです。
入居一時金を0円と設定している場合には、当然ですが毎月支払う額は増えます。一定年数入居するなら入居金を支払うほうがリーズナブルになりますが、入居一時金のメリットとデメリットを検討したほうが良いでしょう。
月々にかかる費用の内訳
月々の支払いに含まれるものは、居住費(家賃)、食費、管理費がメインです。水道光熱費が自己負担になるところもあります。これに、個々の介護度によって、サービスを受けるための費用が加算されます。要介護の度合いによって、自己負担金が変わるので個々に発生する金額は異なります。また、医師や看護師の診察、治療、医薬品などの医療費は個人で支払うことになります。
各施設が有料で行うサービスもあります。買い物代行や理髪、レクレーション、アクティビティなど、受けたいサービスを想定して、介護度に照らし合わせた上で月にかかる料金の予想を立てておく必要があります。
生活の質を落としたくないなら…
質問者様のように、これまで裕福な生活をされてきた場合には「住宅型有料老人ホーム」や「介護付き有料老人ホーム」などをおすすめします。設備やスタッフの数、個室の広さや立地など、高級志向のホームが多く、選択の幅が広いからです。
2種類の大きな違いは、介護サービスの受け方にあります。
「住宅型有料老人ホーム」では介護サービスは自ら選択することができます。これまで利用していたデイサービスや訪問介護などを継続しても構いません。ただし、介護サービスはホームの月額利用料には含まれないので、別途自身で支払っていく必要があります。なかには介護サービスの事業所が隣接されているホームもあり、介護が必要になれば全面的にフォローしてくれるケースもあります。
「介護付有料老人ホーム」は生活に関わること、そして介護についてのほとんどをホーム内で解決できます。特定施設入居者生活介護の指定を受けており、介護に関わる設備は充実していますし、24時間看護師常駐のホームもあります(全ホームが24時間看護師常駐というわけではありません)。入浴や排せつ、食事の介助などの介護サービスは原則1割(所得によっては2~3割)負担します。
表示されている金額だけでは判断できない満足度がある
高級志向の老人ホームでは、有料サービスがたくさん用意されています。コンシェルジュが生活全般をサポートしてくれたり、旅行のアテンドや観劇などの外部アクティブの予約など、外出のサポートをしてくれたりするところもあります。
また、館内にプール、温泉、フィットネスジム、アトリエ、プールバーなどの設備があり、入居者の毎日の生活を潤しているのも事実です。
資産に余裕があるのでしたら、提示されている料金に左右されるよりも、入居される人がどのような生活を送りたいか、また介護が必要になった際の体制はどのようになっているかなどを基準に検討すると後悔は少ないかもしれません。「高級志向」をうたう老人ホームは数多くありますが、本当に必要なサービスの提供を求められるかの判断は難しいところもあります。家族だけで決めかねている場合には、老人ホーム探しのプロに相談すると良いでしょう。