夫の急死で憔悴しきった77歳の土田紅子さん。息子の探してくれた素晴らしい設備の老人ホームへ入居したのですが、スタッフや他の入居者と相性が合わず半年で退去を決意。息子に相談すると強く拒否されてしまいます。それもそのはず、土田さんが思いもよらない行動に息子は出ていたのです。
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一人暮らしを心配する息子に「厄介払いしたいの?」と毒づいてしまった
夫を事故で亡くし、突然一人暮らしになった土田さん。仲の良かった夫婦だっただけに喪失感が大きく、一日が長く感じられ生きるのがつらくなっていました。一人息子は家庭を持ち、車で10分ほどの距離の賃貸マンションに住んでいますが、お嫁さんとの相性が悪く土田さんには同居する意思はありません。
息子は心配して週末ごとに様子を見に来ます。ある時、土田さんの憔悴ぶりに「このままだと母さんが病気になってしまうよ。友達をつくるためにも老人ホームを検討してみては?」と持ち掛けてきました。足腰は丈夫だし、治療が必要な病気もない土田さん。気持ちに余裕がなかったせいで「私を厄介払いしたいの?」と毒づいてしまいました。
いまどきの老人ホームの素晴らしさに感動
母親の気持ちを察しているのか、息子は嫌な顔をせず「そうじゃないよ。老人ホームといっても高級ホテルのようなところがたくさんあるんだよ。シェフがつくる食事を毎日食べられるし、サークル活動があって友達もできる。露天風呂やマッサージ、スポーツジムが完備されているところもある。父さんと住みたいといっていた海の見える場所なんかいいんじゃないかな」と、いまどきの老人ホーム事情を話してくれました。
土田さんの表情が和らぐと、息子はタブレットでいろいろな老人ホームの写真や動画を見せてくれました。これまで抱いていた姨捨山のような老人ホームとは正反対。リゾートホテルのような場所や、高層マンションのようなつくりのところもあります。居住している人のインタビュー記事を読むと、第二の人生を謳歌している様子が見て取れました。
海の見える最高級老人ホームに入居が決まった
このまま自宅にいても一人で老け込んでしまうだけ。そう判断した土田さんは息子に老人ホーム選びを任せることにしました。海が見える部屋、孤立せず人との交流が楽しめ、食事のメニューが豊富、この3つを条件にあげると、翌週には息子が候補となるホームの見学会を予約してきてくれたのです。
実際に行ってみると、思った以上に素晴らしい場所でした。眺望はもちろん、設備の充実も予想以上です。近所にスーパーやクリニックも多く、生活に困ることはなさそうです。息子も「いいね! 俺も将来、ここに住みたい」とはしゃいでいます。息子が自分のために手を尽くしてくれたことに感謝する気持ちが生まれ、土田さんは早々に契約をしました。
入居者との価値観のズレに悩み始めて
入居のための手続きも息子が完璧にこなしてくれました。土田さんは持参する荷物をまとめるだけ。自宅は売却せず、後々、息子家族が住むことになりました。土田さんの夫は大手メーカーの役員を務めたあと、他企業の外部取締役を兼務するなど、晩年まで高収入を得ており貯金は十二分にありました。知人からは成年後見人を立てたほうが良いとアドバイスを受けましたが、息子に「後見人制度は金がかかるし自由もきかない。俺がちゃんと管理するよ」といわれ、株券や通帳、キャッシュカード、自宅と別荘の権利書など、一切の資産管理を息子に委ねました。
心機一転、ホームでの新しい生活がスタート。立地、設備、食事どれも想像通り満足できました。しかし何かが違うと感じ始めたのです。もともと土田さんは下町生まれで、気さくに人付き合いをするタイプでした。夫の仕事関係の奥様とは気が合わず、庶民的な友人とおしゃべりするのが好きでした。ところが、ここに居住している人たちは気位が高く、ホーム内でもブランドものだと思われる服を着ていたり、会話の端々に配偶者の地位や資産を自慢する話題が出てきたりと、土田さんとは真逆の雰囲気だったといいます。
夫は落語が好きで一緒に寄席に行くのが楽しみでしたが、そんな話題ができる相手もいません。オペラや歌舞伎、オーケストラの鑑賞に出かけるなんていう話を聞くとうんざりしてしまいます。価値観が合わないというのはこんなにもつらいのかと悩んでしまいました。
退去を決断。ところが別のホームへ移る予算がない!
一生懸命、自分のために奔走してくれた息子のことを思い、半年ほど我慢しましたが耐えきれず息子に相談すると「住めば都。そのうち慣れる」と退去を認めてくれません。仕方なく、自らケアマネジャに連絡を取り、別の老人ホームを探してほしいと頼みました。
そこから土田さんにとって最悪の事態が明らかになっていきました。新たなホームに支払う入居金が足りないというのです。土田さん名義の口座からは徐々にお金が引き出され、株も売却されていました。引き出されたお金で自宅の改築が始まり、別荘も改築をする予定が立っているといいます。
「母さんが自宅に戻ったときに住みやすいようにと思ったんだ」と息子は主張しますが、自宅に帰るなど誰が想像していたでしょうか。裏切られたと感じた土田さんは知人の弁護士に後を任せ、息子とは一旦、距離を置くことにしたそうです。
息子に任せっきりにしてしまったことを、いまさらながら後悔する土田さん。もし間に入ってもらえるような紹介センターを利用したり、知人の意見を参考にしたりしながら、老人ホーム選びを進めたなら、自分は何を重視すべきなのか、入居前に気づくことができたのではないでしょうか。
金銭に関しては親子でも明確な線を引いておくことが大切です。資産の多い、少ないに関わらず、専門家に相談しておくことがトラブルを避ける得策といえるでしょう。