きょうだいで十分に話し合い、親を老人ホームに入居させようとしたところ、普段付き合いのない親戚から反対されたという話は少なくありません。親戚との意見の違いをどう埋めていければよいのか、老人ホーム選びのコンシェルジュが回答します。
※プライバシーに配慮し、実際の事例と変えている部分があります。
認知症の母を老人ホームに入居させたいが叔父に反対されています
質問:次男の私と同居している80代の母の認知症が重くなり老人ホームに入居させることを決めました。きょうだいで話し合ってのことです。実家を処分するので親戚にも伝えたところ、付き合いのほとんどなかった母の弟が「老人ホームに入れるのは親不孝」と大反対してきました。身内の反対がある場合は、やめておくのが得策でしょうか?
回答:お母様の面倒をみてきた次男家族の意見を尊重することが大切ですが、叔父様の意見には、本人や同居している家族の幸せを改めて考えるいい機会だと耳を傾けてみてはいかがでしょうか。そのうえで、施設や紹介会社と相談することをお勧めします。
面倒を見ていない人の反対意見に惑わされないで
老人ホームを紹介する仕事をしていると、同じような質問を受けることがよくあります。このような場合、何よりも親御さんを面倒見ている人が主導権を握ることが大切です。このままでは介護疲れで、その家族が崩壊してしまう可能性もあります。特に、相談者様が男性ですから、介護の中心は義理の娘にあたる奥様だと思います。
奥様は親戚の人に物申すことは難しいでしょうから、相談者様が盾になり、面倒を見続けるのが無理であることを明言してください。「反対する人がいるなら……」と悩む必要はありません。
ただし、ただ「意見は聞きません」と突っぱねるのではなく、最低限の説明はしましょう。叔父様はご自身もそろそろ介護を受ける時期が近付いていると思うので、ご自身が老人ホームに入るのを恐れて発言されている場合もあります。入居させる施設のパンフレット等を見せて、お母様が不幸になることはないと伝えてください。場合によっては、見学会に同行してもらうのも良いでしょう。
普段会っていない人の前でシャキッとする認知症の親
今回は叔父様が反対されていますが、きょうだい間で意見が食い違うと面倒はさらに大きくなります。もっとも困るのが、親御さんと同居していない長男が「実家を売るのは許さない」「施設に入れるなんてとんでもない」と意見してくるケースです。
認知症の親御さんも、普段、顔を合わせていない子どもの前では、妙にしっかりと受け答えしたり、身の回りのことを自分でしたりしがちです。いつもの介護がどれだけ大変かを力説しても理解してもらえないかもしれません。お母様の普段の困った言動や、奥様が献身的に世話をしている姿を動画にしておくのはひとつの手かもしれません。
親の老人ホーム入居を断固反対…真っ向勝負すると逆効果
昔は長男家族が面倒を見るのが当たり前でしたが、今はきょうだいの人数が少ない家庭も多いですし、娘様が介護を担うケースも増えてきています。そうなると、相続に関しては長男が口だけをはさみ、娘様が疲弊する例も目立ちます。また、娘様は義理親の介護も絡んできて、話はどんどんややこしくなってしまいます。
きょうだい間で話し合う際のコツは、それぞれの親御さんへの思いをきちんと口にすることです。そのなかで、どうしても親を老人ホームに入居させたくない、という人もいるでしょう。しかし、根底にあるのは親への愛情です。真っ向から否定すると話がこじれてしまいます。そういう場合、実際の問題としてどれほど介護を担えるかを問いてみてください。そのうえで、親、そしてきょうだいの幸せを考えていけば、徐々に理解は得らえるはずです。
相続が絡むとさらに話がややこしくなる
ただし、きょうだいでは相続が絡むのでナーバスな問題であることは間違いありません。入居に納得してもらえても、そのための資金作りで実家を売却しなければならないとか、ある程度、資産を整理する必要も出てきます。
介護を担っている人たちからすれば、一日でも早く解決したい問題でありながら、きょうだいだけで話し合いをしても混乱するばかりです。そのような場合には、まずケアマネジャーに相談をしてください。ケアマネジャーは親御さんにとって何が最善かを反対している人に説得する材料を持っているからです。
それでもうまくいかないときには、私たちのような老人ホームを紹介するプロに頼ってもらうのも良いでしょう。親御さんに合う老人ホームを探すだけでなく、自宅の売却や引っ越しなどの相談にも乗ることができまし、きょうだいや親せきとの話し合いに同席することも可能です。子世帯の負担を少しでも減らしながら、親御さんにとって最善の方法を選択するためにも、第三者を上手に使ってほしいと思います。