一人暮らしが難しくなった高齢者。子どもとの同居も拒んでいる。老人ホームに入居してほしいと子どもたちは考えますが本人が断固拒否。いったいどうすれば……。そんな悩みに老人ホーム選びのコンシェルジュが回答します。
※プライバシーに配慮し、実際の事例と変えている部分があります。
杖が必要になった一人暮らしの母。老人ホームへの入居を勧めていますが納得してくれません
質問:遠方に住む79歳の母が腰と膝を痛め杖が必須の生活になりました。認知症はありません。子どもたちとの同居は拒否し、ヘルパーさん頼りの生活をしています。危険なので老人ホームへの入居を勧めているのですが「親を捨てる気か」と受け入れてくれません。どうしたら納得してもらえるでしょうか。
回答:考えはしっかりしているお母様のようですから、まずは老人ホームを嫌がっている理由をじっくり聞いてあげましょう。お母様が言うように「捨てられるような場所」と勘違いしている可能性もありますが、住み慣れた自宅を離れたくない、自由が利かなくなるのが嫌など、真の理由がわかれば対策が立てやすくなります。
まずは一人暮らしを頑張っていると称える
話を聞くときには1対1ではなく、お母様が味方と感じる人を同席させてください。孫や友人、ヘルパーさん、ケアマネジャーでも構いません。話の切り出しは、いきなり老人ホームの話ではなく、今困っていることはないかを聞いてあげてください。おそらく「大丈夫」「一人でやれている」といった返答をされると思うので、「素晴らしい」「さすが」など、お母様が一人でも頑張っていることを認めてあげましょう。
そのうえで、「今は良いけれど、今後はどうしていきたいか」を尋ねてみてください。このとき、同席者から「今は問題ないけれど、これから先、車いす生活になったら一人では不安」という趣旨の話をしてもらいましょう。そのうえで、お母様の気持ちを聞きます。質問者様は同居も視野に入れているようなので、お母様が同居を望まれればここで解決です。
なぜ自宅にこだわるのか……その理由を探る
以前にも同居を提案して断られている場合、お母様の気持ちが変わる可能性はほぼないと思ってよいので、おそらく自宅で過ごすためにさまざまな準備を進める、または老人ホームに入居する、この2択になるかと思います。
お母様が自宅での暮らしを強く希望する場合には、その心のうちを探ってみましょう。自宅に住み続けたいのか、他人と暮らすのが嫌なのか、自由がなくなるのが不安なのか、友達と離れたくないのか……人によって理由は違います。このステップを飛ばしてしまうと、もしホームへの入居が決まっても、お母様の心にはモヤがかかったままになってしまいます。
理由別、説得のアイデア
理由によって説得の仕方は変わります。
自宅に住み続けたい場合
自宅は残し、定期的に自宅に外泊できることを説明する。
他人と暮らすのが嫌な場合
マンションのようにプライベートが確保されているホームがあること、食事や入浴も自室で済ませられることを伝える。
自由がなくなる不安を持っている場合
外出や外泊は自由、ランチやショッピングも自由にできると伝える。また、友達と離れたくない場合には自宅から近いホームであれば、今まで通り友達と会える。面会に利用できるロビーや特別室が用意されている場合もあると伝える。
いまだに老人ホームに姥捨て山のような閉塞感と疎外感を持っている高齢者は多いようです。今どきの老人ホームは明るく、解放的で自由であることを話してあげましょう。お母さまが不安に思っていることに的確に答えられるように、質問者様自身が、事前に老人ホーム選びのプロに相談をしておくのも得策です。
見学会で気持ちの変わる人は多い
少しでもお母様の気持ちが動いたら、なるべく早く見学会に参加してもらいましょう。時間が空いてしまうと、気持ちがもとに戻ってしまう可能性があります。見学をすると、イメージと180度異なるホームの明るい世界に、入居へと気持ちが傾く人はたくさんいらっしゃいます。
また、見学は1ヵ所ではなく、タイプをかえて3ヵ所以上行うのがおすすめです。建物が高層タイプ、低層タイプというだけでも印象が変わりますし、部屋の窓から見える景色が変わるとそれだけで「住みたい」という気持ちになることもあります。試食会に参加できれば、提供される食材や味付けが好みに合うかどうかのチェックもできます。
入居後のフォローも大切
入居が決まった際にも、最初は入居を嫌がっていた高齢者の場合、細かいケアが必要です。入居したての頃は知り合いがなく、スタッフとも慣れておらず寂しい思いをしがちです。ホームに「入居を嫌がっていた理由」「どのように説得したか」を伝えておきましょう。
ホームのスタッフは入居に前向きでなかった人とのかかわり方も慣れています。事前に情報を伝えておくとフォローが期待できます。