老人ホームに入居することを決めたとき、最初の選択肢となるのが「エリア」です。今の住まいのエリアにするのか、ずっと住んでみたかった場所にするのか、それとも子世帯の住まいの近くにするのか。エリア選択の悩みに老人ホーム選びのコンシェルジュが回答します。
※プライバシーに配慮し、実際の事例と変えている部分があります。
仕事や趣味を続けているなら、居住エリアの変更は難しい
質問:70歳の父が、母と一緒に老人ホームに入居すると言い出しました。自宅から近いエリアを希望していますが、地方に住む子や孫が頻繁に顔を見に行くのが難しくなってしまいます。地方に来てもらうにはどう説得すれば良いでしょうか。
回答:高齢になって、知らない土地で暮らすのは不安が大きいと思います。
基本的には地元を望んでいるなら尊重してあげてほしいですが、ご両親の体調によっては緊急呼び出しが続くケースもあります。総合的な判断が必要でしょう。
ひと昔前は、老人ホームというと「郊外」のイメージがありました。しかし、今は都心の高級住宅街やオフィス街にも老人ホームが建てられています。自宅から老人ホームに移り住み、そこから仕事に通っている高齢者も増えてきています。
質問者様のお父様が、まだ、お仕事に関わっているなら地方に呼ぶのは難しいでしょう。ご友人と会われたり、趣味を続けたりと考えている場合も、これまでの居住地域から離れるのは得策ではありません。ご両親のどちらか一方が先立たれたとき、近くに知人がいないと寂しい思いをする可能性もあります。
お仕事を引退されている場合には、もう一度話し合ってみる必要があるでしょう。質問者様がおっしゃる通り、子や孫が気楽に顔を見に行かれないことははっきり伝えておきましょう。老人ホームによっては、家族や友人が宿泊できる「ゲストルーム」が用意されている場合もありますが、そうでないと、日帰りか、近くのホテルなどに宿泊しなければなりません。「実家」のように気楽に泊りに行かれるわけではないことをわかってもらいましょう。
体調に不安があるなら、お子様の近くがおすすめ
お子様との距離が離れた場合に、もうひとつ危惧しなければならないのが「緊急呼び出し」です。病気やケガなどで、手術や入院が必要になった際「家族の同意」が必要になるケースがあります。施設側もできる限り手は尽くしてくれますが、病院関係のやりとりは「家族」が基本です。
85歳以上、あるいは持病のある親御さんの場合には、呼び出しの頻度は上がる可能性があります。こうしたケースではお子さんの家から近い施設を選択し、頻繁に会いにいくことで納得してもらうのが良いでしょう。
認知症が疑われる場合は、無理に環境を変えないで
認知症の症状が現れている場合には、嫌がるのであれば地元から離さないほうが良いでしょう。環境が変わることで、認知症が進むケースもあるからです。散歩などで地元を歩くことで安心感を得られる可能性もあります。
また、かかりつけ医を変更するのを嫌がる場合、主治医に新しいエリアの信頼できる医師を紹介してもらい、申し送りをきちんとすることを伝えてください。高齢になるほど、新しいことや新しい人を受け入れる度量が狭くなりがちです。「無理やり」ではなく、丁寧に説明して理解してもらうようにしてください。
親子だけの話し合いはこじれる可能性も……
現状、健康面に不安がなく、地元の老人ホームを望んでいる場合には、それを尊重しつつ、体が動かなくなったときにも「この場所」がいいのか、そうなったときには子どもの近くに移り住みたいかも話し合っておく必要があるでしょう。
これまでゆかりのなかった「憧れの土地」に住みたいとおっしゃる高齢者も少なくありません。どの程度の憧れなのか、環境をしっかり理解しているか、終の棲家となることを認識しているかなど、じっくり話を聞いてあげて、本当にそのエリアが望ましいのかを判断しなれければなりません。
いずれにしても親子だけで話すと、お互いの主張をぶつけ合ってしまい話がまとまらなくなりがちです。私たちのようなコンシェルジュに相談いただければ、両者の意見を聞きながら、お互いが納得できる折衷案の提供が可能です。