コロナ禍の老人ホーム…75歳の老婦人が抱いた孤独【富裕層の老人ホーム選び、失敗談】

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舅と姑を看取った経験があるからこそ「老後の世話は子どもにさせない」と、心に決めていた75歳の尾野脩子さん(仮名)。一人暮らしになったのを契機に、老人ホームへの入居を決断しました。条件はひとつ、子どもや孫にいつでも会えること。面会しやすいエリアを選択し、家族が泊まれるゲストルームの充実した老人ホームを見つけました。ところが新型コロナの蔓延によって、思い描いていたホームの生活が……。

※プライバシーに配慮し、実際の事例と変えている部分があります。

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子どもたちに迷惑をかけないために元気なうちに老人ホームへ

公務員の夫、夫の両親、そして三人の娘が尾野さんの家族でした。しかし、夫は定年退職前に、突然の心筋梗塞で急逝。娘3人が嫁いだあとは、舅と姑との3人暮らしとなりました。義理の両親は優しく穏やかで同居は苦ではなかったものの、二人とも軽い認知症と診断されています。真面目な性格の尾野さんは「自分が面倒をみなければ」と、かたくなに他人の手を借りることをこばみ、10年以上の介護生活を送ったそうです。

介護を終えたとき、尾野さんは70歳。ようやくゆっくりできると思ったのも束の間、三女が離婚をし、7歳と1歳の子を連れて実家に戻ってきました。働く三女にかわって、孫たちの面倒に明け暮れる毎日が始まりました。大変ながらも幸せな日々。そんな日々は、三女の再婚が決まり、孫を連れて嫁いだことで終わりを迎えます。

尾野さんはひとりになったらなるべく早く老人ホームに入居しようとも決めていたそうです。介護の苦労は身をもって知っています。娘たちに迷惑をかけないためにも元気なうちに入居したいと、尾野さんは老人ホームの折り込み広告をファイリングしてきたのです。

家族と自由に会える老人ホームを見つけた

一緒に暮らしてきた孫たちは尾野さんを大変慕っていました。引越しの日も泣き続け「おばあちゃんも一緒に来て」と腕を引っ張り、尾野さんも涙が止まりませんでした。転居後は月に数回、孫たちが遊びに来て泊まっていきます。腕によりをかけて料理をするのが楽しみで仕方なかったそうです。

老人ホームに行ってもその楽しみが続くようにと考え、自宅と同エリアにある老人ホームを第一候補としました。幸いにも娘たちは3人とも同じ市内に住んでいます。孫たちが来やすいように駅から近く、宿泊できるゲストルームが完備されている点も重視しました。

自宅を残してあるので、尾野さん自身が元気であれば年末年始やお盆は自宅に数日滞在し、子どもや孫と過ごすこともできると考えました。電話で問い合わせたり見学をしたり、楽しみながら老人ホーム探しをして、3カ月後には「ここなら!」と思う老人ホームを見つけ入居が決まりました。

理想の場所を見つけたはずがコロナ禍で状況が一転!

入居したのは2019年の9月。当初は家族が毎週末会いに来てくれて、寂しさを感じることはありませんでした。老人ホームで開催されるイベントに孫も参加して楽しそうにしてくれて、そのときに写真やビデオを部屋で見るのが日課になっているほどでした。

ところが2020年、新型コロナウイルスの流行が始まります。尾野さんの入居する老人ホームは「安心安全」を強く打ち出しており、対応は迅速でした。家族であっても面会は禁止。入居者は通院以外、ほぼ外出できなくなりました。買い物は職員が変わって行うか、宅配サービスを利用するように。

社会全体のことですから我慢しなければとは思いましたが、老人ホームの庭を散歩するのも時間と場所を決められ、自由に散策することは許されません。本や洋服など、自分の目で見て買い物したいものがあってもかないません。ストレスは溜まる一方です。老人ホーム内でもクラスターを防ぐために、入居者同士の交わりが可能な限り制限されていきました。

会えない寂しさを紛らわすためにと、娘たちがタブレットを購入し映像つきで通話できるようにしてくれました。しかし画面越しの対面では、余計に寂しさは増すばかり。ふさぎ込む日々がつづき、尾野さんは次第にベッドから起き上がるのがつらく、食事が喉を通らなくなったといいます。医師からは「軽いうつ状態」と診断されてしまったそうです。

未曽有の危機を前に、各施設は工夫と努力を惜しまなかった

コロナ禍から丸3年が経とうとしています。入居者を守るための厳しい面会・外出制限は、かえって生活の質を下げている一面もありました。そのようななか、苦しまれた入居者もいたことでしょう。最近ではどの施設でも徹底した感染対策をしながら、コロナと共生する努力がされています。尾野さんの施設でも、適宜、条件付きではありますが面会や外出が許可されるようになり、笑顔が戻ってきたといいます。

「自分に合っている」と判断して入所した老人ホームでも、施設長や運営会社の考え方によって緊急時の対応は大きく変わります。今回のコロナ禍では、人数、回数、時間などを限定して面会を許可したり、テレビ電話を職員が操作して通話できるようにしていたり、外出や外泊も適宜検査をしながら実施したりと、各施設、工夫と努力を惜しみませんでした。

ただ難しい判断の連続でしたので、制限の緩和などのタイミングは、施設によって差が生じたようです。緊急時の対応、そして考え方も老人ホーム選びの重要なポイントとなることは間違いないでしょう。

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このページの監修者
脇 俊介

株式会社プランドゥ代表取締役 兼「MY介護の広場 老人ホームを探す」統括マネジャー。
2004年にグループ会社の株式会社パセリ入社以来、営業部門にて「スクール検索サイト BrushUP学び」のコンサルティング営業、制作ディレクター、グループマネジャーを歴任。2014年からは新事業部「メディケア事業部」のマネジャーとして、明治安田システム・テクノロジー株式会社との業務提携をおこない、介護施設WEB検索コンテンツ「MY介護の広場 老人ホームを探す」サービスを開始。
現在は取締役代表業務と兼任し、入居相談員として相談者のサポートをおこなう一方、老人ホーム関連の講演活動にも精力的に取り組んでいる。

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