見学会で試食もしたが…81歳・男性、「老人ホームの食事」への小さな不満に耐えきれず

老人ホーム 食事への不満イメージ 幻冬舎ゴールドオンライン
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長年一人暮らしをしてきた斉木元治さん(81歳/男性)は、持病の悪化をきっかけに老人ホーム探しを始めました。「美味しい料理」を条件に、3施設の食事つき見学会に参加。もっとも味が自分にマッチしたホームに入居したのですが……。実際には冷めた味気ない料理ばかり。斉木さんの失敗から見学会で気を付けるべきポイントを探ってみましょう。

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熟年離婚後の一人暮らしに限界を感じて入居を決意

60歳で大手商社を定年、直後に価値観の相違から熟年離婚した斉木さん。その後は20年間賃貸マンションで一人暮らしを続けてきましたが、心臓の持病と、ひざ痛が悪化したことをきっかけに老人ホームへの入居を考え始めました。

結婚していたときはキッチンに立ったこともありませんでしたが、一人暮らしになってから少しずつ料理を覚え、今ではたまに遊びに来る孫に御馳走するほどになっています。ただ、最近は免許を返納し買い物にも行くのも苦労し始めました。膝痛でキッチンに立つ時間そのものも減ってきました。

2人の娘さんは元妻とは仲良くしているようですが、斉木さんは子どもたちとの交流はほとんどなく、老後の面倒をみてもらうことはできそうもありません。食事面を考えても、そろそろ良いタイミングと判断したのです。

3つの条件をクリアした老人ホームを選択

老人ホーム選びの条件は3つに絞りました。ひとつは最期まで面倒を見てくれるところ。医療的な措置が必要になっても住める場所を確保したいと考えました。第2にある程度大きな運営母体であること。経営が傾いて退居を迫られる……そんな心配もないでしょう。そして3つ目に食事です。

結婚していたとき、元奥さまは斉木さんの体を考えて、薄味の料理が定番だったといいますが、こってりした料理や揚げ物が好きな斉木さんにとって物足りなかったといいます。ですから、高齢者向けの食事だからといって、薄味で旨味もないような料理を提供する老人ホームは避けたかったのです。

条件が絞れたので早速、「食事が自慢」とうたっている老人ホームに連絡を取り、試食のできる日程で見学会に参加しました。1件目のホームの食事はまぁまぁでしたが、こぢんまりした雰囲気で「経営は大丈夫か?」と勘ぐってしまいパス。

2件目と3件目は誰もが知っている大手企業が経営母体です。どちらも専属のシェフが料理をしていると言います。夕食は3パターンから選べると言いますし、1ヵ月のメニューを見てもバラエティに富んでいます。

どちらを選ぶか悩みましたが、食事の時間帯に余裕のある3件目を最終的に選択しました。朝食時間を8~9時に設定している2件目に対し、一件目は7~9時、夕食も18~20時と時間の幅が大きいのです。多くの高齢者が早寝早起きになると言いますが、斉木さんも4時には目が覚めてしまいます。自宅では6時には朝食を食べていましたから、7時スタートの朝食は大変助かります。

きっかけは些細な料理への不満

入居を決めた老人ホームは斉木さんが愛する海の近くです。若いころは磯釣りを趣味にしていたので、朝陽の昇る神々しさを自室から眺められるのは幸せでした。毎朝、太陽にパワーをもらい食堂へと向かいます。

毎回の食事は、やはり美味しく「やはり、料理自慢のことだけある」と感心するばかり。予約不要で、その日のメニューを見てからオーダーできるシステムも満足でした。

しかしある日、ちょっとした違和感を覚えることがあったといいます。それはとても些細なことでした。オーダーした料理に斉木さんが嫌いなシソが使われていたのです。実は斉木さん、香りが強い香草などが大の苦手。シソ以外にも、三つ葉、春菊、パセリ、パクチーなど。「昔から、香りが強いものは嫌いなんだよ」と文句を言うのも大人気ないので、ぐっと我慢をしました。

試食会のときには「お嫌いなものはありますか?」と聞いてくれました。思い返せば、そんなホスピタリティも気に入ったところでした。しかし普段の食事では聞いてくれるはずがありません。嫌いなものが入っていれば、そっと避ければいい、ただそれだけだけど……斉木さんのなかで生まれたモヤモヤは、いつまでも晴れずにいたといいます。

戻る家がなく、我慢し続ける後悔の日々

最初は、本当に些細なことでした。しかしその一件以来、試食会で感じたホスピタリティを食事はもちろん、ほかのところでも求めてしまうようになったといいます。そして小さな不満が少しずつ積み重なっていき、日を追うごとに後悔は大きくなっていきました。賃貸だった元のマンションは引き払ってしまっていますし、子どもたちに頼ることもできず、斉木さんは今も不満を抱えたまま同じ老人ホームで暮らしています。

見学会での好印象が実際に入居してみると崩れてしまうケースは斉木さんの場合に限ったことではありません。いちばんの理由は、入居する人が自分だけで見学会に行くと、どうしても「良い面」だけに目が行ってしまうからです。家族や親せきと一緒に見学に行き、第三者の冷静な目で見てもらうこと、そして少しでも不安な部分は質問をして解決するようにしたいものです。

家族のいらっしゃらない場合には、老人ホームのコンシェルジュに同行を依頼するのも良いでしょう。入居する人の好みやこだわりを聞き取った上で、見るべき箇所、質問するべき点のアドバイスをしてもらい、後悔のない老人ホーム選びをしてください。

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このページの監修者
脇 俊介

株式会社プランドゥ代表取締役 兼「MY介護の広場 老人ホームを探す」統括マネジャー。
2004年にグループ会社の株式会社パセリ入社以来、営業部門にて「スクール検索サイト BrushUP学び」のコンサルティング営業、制作ディレクター、グループマネジャーを歴任。2014年からは新事業部「メディケア事業部」のマネジャーとして、明治安田システム・テクノロジー株式会社との業務提携をおこない、介護施設WEB検索コンテンツ「MY介護の広場 老人ホームを探す」サービスを開始。
現在は取締役代表業務と兼任し、入居相談員として相談者のサポートをおこなう一方、老人ホーム関連の講演活動にも精力的に取り組んでいる。

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