最近、よく耳にする「高級老人ホーム」。料金が高いのはわかるけれど、一般的なホームと何が違うのか解説していきます。
入居金が1億円を超える老人ホームがある
老人ホームとひとくちに言っても経営母体が公的なのか民間なのか、介護度やサービスによってさまざまなタイプに分かれます。もちろん費用も異なり、公的な施設の中でもリーズナブルと言われる特別養護老人ホーム、いわゆる特養は入居金ゼロ、月額の利用料8万円くらいからが目安です。
一方で、このところ人気がうなぎのぼりとなっている「高級」とうたわれる老人ホームの料金を見てみると、入居金は最低でも3千万円、なかには1億円を超えるケースも珍しくありません。月の利用料はサービスの選択によって異なりますが、最低でも25万円、多ければ50万円を超える場合もあります。
年齢の若いうちから老人ホームを確保する富裕層
高額になる理由のもっとも大きな点は、贅沢なホームのつくりにあります。緑豊かで散歩やガーデニングができるような広大な敷地、リゾートホテルのような外観や内装、居室の広さも十分すぎるほどに確保されています。有料老人ホームでは一人当たりのスペースは最低でも13平米を確保するように決められていますが、高級老人ホームでは45平米以上はあたり前、100平米を超えるところすらあるのです。
居宅内の設備も料理が気兼ねなくできる整ったキッチンや広いバルコニーが用意されていたり、夫婦や親子での同居を考慮して2ベッドルームの部屋もあったりします。介護が必要のない段階から入居できる自立型の老人ホームでは、若いうち(65歳以上が基本)に自宅から高級老人ホームに転居したり、別宅として老人ホームを確保したりする富裕層も増えています。ホームから出勤する、あるいはホームの居宅内でリモートワークをする経営者もいるほどです。
料金に見合ったサービスはあるのか?
ホームによってサービスはまちまちですが、高級をうたうホームでは、家事や身の回りの世話のほとんどを有償で依頼することができます。室内の電球交換のような小さなことから、ショッピングのための送迎、観劇やコンサートに行きたいと思えばチケットの手配、旅行会社と組んでトラベルプランの相談にのってくれるところもあります。ペットとの同居が可能なホームでは、トリミングや動物病院への送迎もサービスの一環の場合もあります。
館内の設備は誰もが楽しく、そして飽きずに暮らせるような工夫が満載です。露天風呂つきの大浴場、プール、エクササイズジム、エステルーム、美容院、ネイルサロン、音楽室、アトリエ、図書室、麻雀室、ビリヤード場などあげたらキリがありません。これらの施設を使ったサークル活動やイベントの充実も日々の生活を彩ります。プロのアーティストによる演奏会、劇団による演劇などは、外出が難しくなった人が館内で楽しめるイベントでもあります。
自分に合った老人ホーム選びのポイントとは
ただし高級だから満足できるとは限りません。もっとも大切なのは住む人の個性にマッチしているかです。人生100年時代、長期間を過ごす暮らしの場としてふさわしいかの判断が必要です。
たとえば日々の食事は入居前の見学会でチェックが可能ですが、ホームによっては「試食会専用」の特別メニューを提供するケースがあります。これでは一日3食、食べ続けても飽きないのか、本当に自分の舌に合うのかを判断できません。見学会の際に、普段のメニューの数、味、量などを必ず確認するようにしたいものです。また苦手な食材が多いとか、食品アレルギーを持つ人は、配慮を求められるかもチェックの対象になります。
居室の選び方も重要です。高級老人ホームの場合、利用料の高い部屋から埋まっていくのが常ですが、そのようなマウントの取り方はあまりお勧めしません。それよりも重視してほしいのは動線です。広すぎる部屋で、足腰が弱ったときにトイレに行くのが大変になってしまうとか、食堂から遠い部屋で苦労しているという声も聞きます。
スタッフとの相性も大切です。経営母体や管理者によって、入居者をお客様のようにもてなすように教育されているところと、一緒に生活をする仲間のようにフランクに接するところがあります。干渉の度合いも各ホームによって異なります。マンションで暮らすように、なるべく干渉して欲しくないのか、それともスタッフとの交流を楽しみたいのか。このあたりも入居に当たっては知っておきたいポイントです。
もうひとつ忘れてはならないのは入居者の雰囲気です。「入居者と打ち解けられなかった」と、退居を決める人が案外多いのは事実として知っておくべきでしょう。特に自分がこれまで暮らしてきた土地から離れた場所の場合、地域性による人柄の違いで悩む人は少なくありません。また、どのような職業の人が多く入居しているかも、ホームの雰囲気を決めるポイントになります。
失敗しない選択にはプロの意見も重要
高級老人ホームのパンフレットは見ているだけでため息がでるほど素晴らしいものが多く、ホームページもまるでハイクラスなホテルの紹介ページのようです。貴重な情報ではあるのですが、細かい裏事情までは見えてきません。子どもや親せきに相談しても、この辺りは明確になってきません。
そこでおすすめするのが、老人ホーム選びのプロにアドバイスを求めることです。裏事情はもちろん、これまでに退居を選択した人の理由などがわかれば、自身の性格や求めているものに照らし合わせて、正しい選択に近づくことができます。終の棲家を後悔なく見つける一助になるはずです。